ひとことに「和箪笥」といっても用途によって様々な構造の違いがあるものです。この記事では主だった箪笥の種類を、選ぶ際のポイントとともにご紹介します。
和箪笥だからといって和室に置かなくてはいけないということはありません。現代のライフスタイルに合わせて、また、これからのシンプルで洗練されたインテリアの中にも是非取り入れてみたい品です。日本の美的感覚が詰まったお気に入りの一品を見つけてみましょう。
衣裳箪笥
文字通り身につけるものを収納していた箪笥です。普段着の着物をそのまま収納していた横幅90cm前後のものから、たとう紙ごと収納できる横幅110〜120cm前後の2種類のサイズが主流です。
現代、着物を収納する際はほどんどたとう紙に包んで収納されると思いますので、着物収納としてお探しの場合は必ず引き出しの横幅がたとう紙より大きいものをお選びくださいね。また、着物はたくさん重ねて収納しないので、なるべく引き出しは浅い方が使いやすいかと思います。
洋服を収納する際の選ぶポイントとしては、引き出しの深さやデザイン性でしょうか。洋服を収納する際、特にセーターやスウェットなどは畳むと高さが出やすいので、深い引き出しの方が使いやすい傾向にあります。
構造は、上から下までひと続きのものや、分けても使える写真のような二段重ねのものもあります。またデザインも京箪笥のように金具が小さくすっきりとしたものから、仙台箪笥のように豪華な金具が取り付けられた重厚感あるものまで実に様々です。
衣裳箪笥は頻繁に出し入れする家具ですので、引き出しの滑り具合や全体の立て付けなどがしっかりと手入れされ、毎回ストレスフリーに使えるものを選びましょう。
車箪笥
江戸時代、商家でお金や帳面などの大切なものを収納していた箪笥です。箪笥の下に車輪がついているので車箪笥と呼ばれます。なぜ車輪がついていたのかというと、火事が多かった昔に、大切なものが入ったこの箪笥を引いて逃げ出せるようにしたためなのです。
歴史的に有名な明暦3年(1657年)の大火災で皆が車箪笥を引いて逃げ出し町が大混雑となって以降、幕府の命で江戸、京都、大阪の三都では製造禁止となったものです。よって、車箪笥は数が少なく貴重なもので、アンティーク家具好きの方には憧れの箪笥でもあるのですね。
内部を守れるように、周囲は柱のように太い框(かまち)と横桟でしっかりと取り囲まれた作りになっています。引き出しがるものや、引き戸だけのものなど多少の構造の違いはあれど、分厚い木と重厚感ある金具の組み合わせはどの車箪笥にも見受けられる特徴でしょう。
車箪笥を選ぶ際には、あまり綺麗すぎるものよりも時代がかった金具や、使われて丸みや傷がついた木肌のあるものをあえて選ぶほうが風格があって良いと思います。伝統的なデザインや、時代を超えてきたものの質感は今日のイテンリアの中で存在感を放ってくれることでしょう。
帳場箪笥・帳箪笥
「帳場」とは、商家や宿屋などで、帳付けや勘定をする所のことをいいます。明治時代に京都や大阪など関西地方で広く用いられていました。
お金や帳面、印鑑など商売に必要な大切なものを収納するために作られたのが始まりで、商家や宿屋の特に人目に付く場所に置かれた為に、デザインは勿論のこと、立派な木材や金具が使われているのが特徴です。
また、盗みに入られた時、簡単に見つけられない様にからくり引き出しやからくり箱が仕込まれたものも多くあるんですよ。
使われていた環境や時代背景を感じさせてくれる箪笥ですね。
帳場箪笥は、写真のように引き戸や引き出し、けんどん扉といったように収納部分が細かく分かれているものが多いので、選ぶ際に全体の立て付けなどがしっかりと手入れされ全ての収納部分がきちんと開閉できるものを選びましょう。また、人目に付くところに置かれていたものですので、なんといっても面(おもて)のデザインが美しく「これだ!」とグッとくるものを選びましょう。
小箪笥・手許箪笥・用箪笥
江戸時代から普段暮らす部屋の身近なところに置かれ、手紙や印鑑、お金や装身具など、貴重品や身の回りのこまごました小物などを入れた小型の箪笥です。
小さな引き出しや引き戸が組み合わさって、なんとも愛らしい品が多く、和箪笥入門としてもおすすめです。
さっぱりとした桐材に控えめな金具のものから、ずっしりした欅材に重厚感ある金具がついたもの、また写真のように、昔の型の箪笥によくある閂(かんぬき)式の錠がかかるようになっているものなど様々あり、選ぶのが楽しいのも小箪笥の魅力。
選ぶ際には、床に直接置くのか カウンターやローボード、デスクなど何かの上に置くのかで選ぶサイズ感が変わってきます。床に直接置く際にはあまり小さすぎると貧弱になってしまいますし、何かの上に置く際には圧迫感が出過ぎないものがおすすめです。サイズをよくイメージして選びましょう。